天然染料で染められ、細かく織られたペルシャ絨毯は、踏めば踏む程ツヤが出て、味わい深い色合いを徐々に現します。 踏むことによって美しさが増す芸術品は、他に類を見ないと言っても過言ではないでしょう。 頑丈で耐久力の高い素材使いにより、80年〜100年ほどの酷使にも十分耐えることができます。
タブリーズ/Tabriz
ビザンチン様式の「青のモスク」で知られるイラン北西部の城郭都市タブリーズは、何世紀にも渡ってイラン有数のペルシャ絨毯の産地としてその名声を保っています。
長い織りの歴史を誇るタブリーズは、モンゴル帝国に支配され、イルハン国の首都として栄えた13世紀ごろから既に高度な発展とともに産業の中心としての役割をはたしてきました。魅力にあふれるデザインと強い耐久性、そして綿密な織りによりタブリーズのペルシャ絨毯は古くからイラン各地はもとより、海外からも希求され続けています。
近代になっては樹木や花々はもとより、動物、狩猟風景、格子模様、絵画模様とさまざまなデザインが織られ、小さなものから大きなものまでそのサイズも豊富です。高い技術の織り手を有するタブリーズでは近年たくさんの工房が創設され、そこで生み出される優れた絨毯は世界中から引手あまたとなっています。
ナイン/Nain
ナインとは、イランの中央部、イスファハーン北東部の砂漠に囲まれたオアシス都市です。
古くから手織りの男性用マントの名産地として広く知られていたナインは、その繊細な織りの技術を生かして高品質で美しいペルシャ絨毯の産地に発展しました。
ナイン産絨毯の大きな特徴のひとつは、砂漠の都市ならではの澄んだ明るい色合いです。モチーフはイスファハーンの影響を色濃く受け、伝統的なメダリオンやシャーアッバース文様(花の断面図をモチーフ化したもの)が多く見られます。素材には平均的なペルシャ絨毯よりも良質で柔らかなウールが用いられ、シルク絨毯よりもウール絨毯、とりわけウールにシルクを織り交ぜたものが好まれています。
クム/Ghom
首都テヘランの南、乾いた砂漠にあるクムはイラン第二の宗教都市です。
近代になって織られ始めたクムのペルシャ絨毯は、魅力的なデザインと心地のいい色彩、そしてきめ細やかな仕上がりにより瞬く間にイラン各地をはじめ世界中に名声を広めました。良質な糸と染色により高い品質の絨毯を織りあげるクムは、シルク絨毯、ウール絨毯共に最も重要な産地としての地位を確立しています。
バラエティーに富んだクムの絨毯は、イランの各産地から際立ったデザインを集め、再構築したものでもあります。優れた材料と美しい色彩により研ぎ澄まされ、自在に織りあげられる多種多様なデザインは、クムのペルシャ絨毯としてより洗練された美しさで見る者を魅了します。